病院や介護施設など、給食を提供する現場において、Excelを使用した食数管理が広く行われています。しかし、利用者や患者の入退所・入退院などによる急な食数変更が発生するたび、管理に使用しているファイルの修正や集計、別ファイルへの転記などの手作業や関係各所への情報共有が必要となるため、担当者の負担となっているケースがあります。これは決してExcelそのものが悪いというわけではありませんが、管理規模が大きくなるにつれてヒューマンエラーや情報共有の遅れなどの課題が生じやすくなります。
こちらの記事では、Excelによる食数管理を行っている現場が抱えやすい課題について整理し、「脱エクセル」によるメリットや食数管理システムでできること、システム選びのポイントを解説していきます。
給食現場において、日々提供する食数をExcelやスプレッドシートなどで入力や集計を行う管理手法を「Excelによる食数管理」と呼びます。職場で使用しているPCにExcelがインストールされていれば、食数管理を行うために新たなアプリケーションなどを用意する必要がなく導入コストを抑えられますし、多くの人が使い慣れていることから手軽にはじめられるというメリットが挙げられます。
ただし手動で関数を組んで集計を行う仕様にするなど、担当者ごとのカスタマイズに頼った独自の運用になりやすい、という側面があります。
「脱エクセル」とは、食数管理においてExcelを完全に使用しなくなることではなく、食数の登録や変更、集計作業を行う際の「手作業」への依存を減らすことを指しています。食数管理を行う専用システムなどの導入によって、複数のファイル間での転記など、Excel特有の煩雑な作業を自動化・効率化し、現場のスタッフが本来の業務に集中するための環境を整えることを目的としています。
Excelによる管理とシステム管理を比較した場合、「データの連動性」と「リアルタイムな情報共有」といった点が違いとして挙げられます。
Excel管理では、誰かがファイルを更新した後は別のファイルに必要事項を転記し、それをメールや印刷などで共有することが必要になるため、どうしてもタイムラグが発生します。しかしシステム管理ではひとつのデータベースにてデータが管理されていることから、食数の変更などを行った際には厨房の集計画面や発注データに反映されます。このように、システム管理によって情報のズレを防止できます。
病院や施設においては、日々の入退院や外泊、デイサービスの利用状況の変更などにより、急な食数変更が日常的に発生します。Excel管理を行っている場合、食数変更が発生するとまず「病棟や施設別の食数表」のExcelを開き数値を修正し、さらに厨房の総括表や食札用のデータまで手作業により連動させることが必要になります。
少ない変更であれば問題なく対応できるかもしれませんが、変更依頼が重なった場合どこまでファイルの内容を変更したのかがわからなくなることもあるでしょう。1つの変更が複数のファイルに影響しますので、変更頻度が高い現場では入力や確認にかかる手間と時間が大きくなり、担当者の負担も重くなります。
前述の通り食数の変更を受け付けた場合、Excelを修正し、さらに集計を行って別ファイルへ転記して発注を行うといった業務を全て手作業で行う必要が出てくるため、ヒューマンエラーが発生しやすい点も大きな課題となっています。
例えば、現場からの紙や電話での連絡内容をExcelに入力する際に打ち間違ってしまう、集計結果を別ファイルへコピーする際にも行がずれてしまう可能性が考えられます。また、複数の担当者が作業を行う中で関数の参照範囲が誤って上書きされてしまい、合計数が合わなくなるトラブルも発生します。
このようなミスは、発注漏れや調理数の過不足に直結することから、食材のロスや提供時間の遅延につながる原因になります。
複数の部門で食数を共有する場合、管理表を編集する人ごとに新しいファイルが複製されてしまい、どれが本当に最新のデータなのかがわからなくなってしまいます。また、共有サーバー上のファイルを誰かひとりが開いていると、他の人が編集しようとしても「読み取り専用」となってしまい作業ができなくなるため、非効率であるというデメリットもあります。
その結果、厨房側と病棟側で認識している食数データにずれが生じてしまうことから、配膳の直前になり数が合わないというトラブルにつながる可能性が考えられます。
Excelを使用した食数管理を続けていると、長く担当している職員が現場の要望に合わせてシートを作り込んでいるケースもあります。中には複雑なマクロや関数が組まれていることもあり、担当者が不在の場合他のスタッフが作業をしてもエラーが出てしまい作業が進まなくなる「業務の属人化」が発生します。
属人化が発生してしまうと引き継ぎに多大な労力がかかることに加えて、設定の変更などをしたくても誰も対応できず、最終的に新たな入力用のExcelファイルを作成することになり、悪循環に陥ってしまうケースもあります。
給食業務は食数を把握するだけではなく、「献立作成」「食材発注」「在庫管理」「原価計算」などさまざまな業務と繋がっています。しかしExcel管理を行っている場合、食数データを月間で提供した実績表や原価計算のためのデータとして利用しようとした場合、膨大なシートから手作業で数値を抽出するのに時間を要するなど、非常に手間がかかってしまいます。
このように、食材のロスを減らすための食数データを用いた発注量予測など、他の業務にデータを利用しにくくなってしまうという課題も発生します。
専用のシステムを導入すると、食数の変更をスムーズに反映ができる点が大きなメリットです。病棟や施設でシステムに入力された変更データを、即座に厨房などの管理画面に反映させられます。Excel管理のように、「電話やメモで受けてから手作業で修正を行う」という作業が不要になるため、伝達漏れや対応忘れ、タイムラグなどの課題が解消されます。急な入退院や外泊などにもスムーズな対応が可能となり、厨房の混乱や現場でのトラブルを防ぐことにつながります。
システムで管理を行っている場合、複数人が編集を行ったとしてもファイルの競合が発生せず、常に食数の一元管理が可能になります。この点から、病棟や厨房など、関わるスタッフが同じ「正しい数字」についてリアルタイムでの共有が可能となるため、「どれが最新のファイルなのか」と探す手間や「読み取り専用になっており作業ができない」などのストレスを感じる必要もありません。情報伝達もスムーズに行えることから、配膳の過不足も防止できます。
登録された食数の変更が発生した場合、データが一元管理されていることから、ファイル間でのデータ転記を行う必要がなくなり、手入力によるヒューマンエラーを大幅に削減できます。さらに、データの集計にかけていた時間と手間を本来の業務に充てられるようになります。
脱エクセルは、これまで使用してきたExcelをやめることが目的なのではなく、「食数管理にかかっていた手作業やミスを減らすこと」が目的であるといえます。
システムの導入で、日々の食数データを他の業務と連携して活用できるようになるというメリットも得られます。たとえば、確定した食数データと献立情報を連動させることによって、食材の正確な発注量を自動で計算できるようになります。このように、データを他の業務にも活用できるようになることで無駄な発注防止や食材のロスの削減につながることが期待できます。
Excelを使用している場合、データが複数のファイルに分かれていることがあります。このような状態の場合、過去のデータを抽出しにくいという問題がありますが、システムの導入によって期間や条件などを指定して検索や出力が容易にできるようになります。蓄積されたデータを活用できれば、より精度の高い発注予測などに活かせるようになります。
カレンダー形式の画面や一覧表形式の画面で、日々の食数の登録や変更を行えます。PCからの入力だけではなく、タブレットを用いた入力に対応しているシステムもあり、病棟や介護の現場から直接変更の依頼をかけることもできます。電話やメモ、FAXなどを用いたやりとりを減らせるため、スピーディーで漏れのない対応につながります。
「常食」「全粥食」「刻み食」といった形態の対応から糖尿病食、減塩食など、複雑な食種ごとの内訳について管理できます。個別の禁忌情報やアレルギーへの対応、要望なども紐付けして登録できることから、調理時の見落としや誤って配膳してしまうリスクを減らすことが可能となります。
システムの利用によって、複数の病棟や離れた場所にある系列の施設、通所サービスなどの職数もシステム内で一元管理ができます。複数拠点間の献立や発注情報についてまとめての管理が可能になるといったように、複数拠点やチームでの連携をスムーズに行えるようになります。
たとえば特定曜日のデイサービスの利用や、行事食を提供する時など、条件を指定して複数名分の食数を一括で変更・登録する機能です。入力されたデータは即座に反映され、日計表や月間集計データが生成されます。一括でデータの変更ができるため手間を削減できますし、集計も自動で行われることから確認作業も不要になります。
確定した食数データと献立管理を連携させることで、発注量の自動計算が可能になり、必要な食材の総量を容易に算出できます。また、「どのメニュー(食種別)を何食作るか」を正確に割り出せるため、献立ごとの調理指示や食札の作成もスムーズに行えるようになります。
登録された食数と献立情報をもとにして、必要な食材の総量を自動計算し、発注データの作成を行います。手作業による計算ミスのリスクがなくなる点に加え、必要量の発注が可能となるため、食材の廃棄ロスや不足を防ぐことに繋げられます。また、煩雑な発注業務の時間も削減し、担当者の負担を軽減します。
蓄積されたデータをもとに、施設の運営などにおいて求められる各種帳票を作成・出力する機能です。例えば食種 別食数表や食札、食種別月間食数表などシステムによってさまざまな帳票に対応しています。この機能により、帳票作成のためのデータ集計やデータ精査などにかかる時間や手間、Excel上のレイアウト調整などの手間を削減できます。
食数の登録や変更は頻繁に使う機能であるため、「誰でも迷わず、直感的に操作ができるか」が非常に重要なポイントとなります。デモ画面などを用いて、登録や変更が簡単にできるかを確認しておくことが大切です。急な変更が発生した際など、急いで入力する場合でも簡単な操作が可能なシステムであれば、ミスが発生するリスクを減らせます。また、入力が容易にできればITに不慣れな職員が多かったとしても、現場への定着が進みやすいといえます。
「自施設の運営規模や形態に合わせた管理ができるか」を確認することも重要です。複数の施設を一括で管理したい場合には、拠点ごとにアクセス権限を設定する機能や、すべての拠点の合算集計を容易にできる機能が求められます。「全拠点の集計に時間がかかっている」など、現在複数拠点を管理する上でどのような点が課題になっているのかを洗い出し、その課題を解決できるような機能が搭載されたシステムを選択すると、業務の効率化につながります。
施設で提供している食事のバリエーションに、システムが対応できるかも確認すべき部分です。さらに「一口大」や「極きざみ」など、細かい食形態や、アレルギー・禁忌への対応、「大盛り」「半量」など主食の量といったような個別の対応についてどこまで詳細に登録・管理ができるかも十分にチェックしておきましょう。
現在管理しているルールについて、システム上で無理なく運用できるかという部分をあらかじめ確認しておくことが大切です。
食数を管理する機能のみではなく、献立や発注、在庫など関連する業務と連携できるかも確認しておくべきポイントです。確定した食数データを献立機能と連携すれば、自動的に必要量の計算や発注量の作成、在庫の管理といった部分までスムーズに行えるかをチェックしておきましょう。
現在、別々のファイル間で管理している業務をシステムで一括して管理できるようになることで、業務の効率化やコスト削減などの効果が期待できます。
「いつ・誰が・どの食数を変更したか」という変更履歴を記録できるシステムの場合、万が一伝達ミスや配膳の間違いがあった場合の原因究明を容易に行えます。また、過去の食数実績や食種別の推移などを検索・出力できる機能があれば、月次の経営分析などに役立てることができます。過去のExcelファイルをひとつひとつ開いて必要データを探す時間を削減し、蓄積されたデータを施設の運営改善に活用できます。
たとえ高機能なシステムだったとしても、現場のスタッフが使いこなせなければ定着せず、導入した意味がなくなってしまいます。操作性はもちろん、画面の文字サイズについて確認するとともに、導入時の初期設定サポートや、トラブルが発生した際のサポートが手厚いかどうかをあらかじめ確認しておくことがポイントとなってきます。
システムの導入により、「今までのExcel管理で苦労していた部分が、システム導入によって楽になる」という点を実感してもらえれば、現場への定着もスムーズに進むことが期待できます。もし試用期間が用意されているシステムであれば、導入前に現場の担当者に操作してもらい、意見を聞くことが推奨されます。
脱エクセルの目的は「Excelをやめること」ではなく、急な食数変更への対応や複雑な集計、手作業での転記ミスなど「担当者の業務負担やヒューマンエラーを減らすこと」にあります。システムの導入によって、作業が容易に行えるようになるとともにリアルタイムな情報共有が可能になれば、現場の確認作業を減らし、担当者の負担を軽減できます。
システムの導入を検討する場合には、食数管理機能だけではなく、献立作成や食材発注、在庫管理など周辺業務との連携ができるかという視点が大切です。一連の業務をシステム化することで、給食業務全体の効率化が可能になります。ぜひ、自施設が抱えている課題に合ったシステムを導入してください。
導入の手間やコストを抑えられる「クラウド型」の中から、現場別に適した給食システムを5つ紹介します。セントラルキッチン・施設内の厨房で調理する病院など、現場によって適したシステムは異なるため、あなたの給食施設に合わせた給食システムを選定しましょう。




